コロナの影響もあり、これまで導入を先送りにしていた中小事業者の多くがIT導入・デジタル化の試みを行っています。このような状況の中、経済産業省が推進するIT導入補助金(サービス等生産性向上IT導入支援事業)では、特に中小企業のデジタル化の基盤となる「会計」「受発注」「決済」「EC」のIT導入に力を入れています。

今回は、その中でも多くの事業者が検討していると思われるECサイトの導入IT導入補助金がどのように活用できるかを解説していきます。

IT導入補助金で対象となるECサイト

ECサイト導入でIT導入補助金を申請する条件として、労働生産性を向上させるためのECサイトであること、かつショップカート(電子決済)機能が組み込まれていることが必要です。以下のようなECサイトが対象となります。

  • 新規導入(制作)のECサイトであること
  • EC-CUBEなどのパッケージ型ECサイト構築
  • Shopify、BASE、STORESなどのASP型サービスを使ったECサイト構築
  • 既存のHPのリニューアルで、決済機能を追加する場合
  • 納品されたECサイトが確認できること(サイトURL、管理画面のキャプチャを報告時に提出)

一方で、以下のような場合は対象外となります。

  • 決済機能のないHP制作
  • IT導入補助金の交付決定前に着手したECサイト(リニューアルや商品追加のみ)
  • ショッピングモールに既に出店していて商品追加のみ行う場合
    ※ただし、ショッピングモールへの新規出店には申請可能です。

IT導入補助金で申請できるECサイト関連経費

IT導入補助金では、ECサイトの制作費用だけでなく、各種関連費用も対象となります。

例えば、ロゴ、バナー等のデザインやコーディングを含めた全ての制作費用。そして、CMS・カートの利用料2年分までが補助対象となります。その他、ECサイト導入に関わるコンサルティング費用初期設定やマニュアル作成、研修費用保守・運用費用(2年分)、セキュリティソフトや機能拡張にかかる費用なども計上できます。

また、ハードウェア購入費用(PC・タブレット)が、1/2の補助率で10万円まで補助を受けられます。

具体的な例で示します。

月額プランで支払うShopifyのクラウドサービスを利用した自社ECサイトを制作する場合を考えてみましょう。
この場合、①ECサイト制作費用のほか、②Shopify月額クラウド利用料の2年分、③導入時の打ち合わせや設定費用、④導入後のマニュアル制作費、⑤導入後の保守・運用サポート(2年分まで)など、全ての関連費用を経費計上することが可能です。

リニューアルするECサイトは対象外ですが、新規ECサイト制作でなくても、既存のHPに決済機能を追加する場合でもIT導入補助金の対象となります。

下記のように既存HPに予約・決済機能を追加する場合はIT導入補助金の対象となります。

IT導入補助金の申請枠と要件

IT導入補助金は、「通常枠」「デジタル化基盤導入枠」の2つの種類があります。ECサイト導入費用を経費申請したい場合は、「デジタル化基盤導入枠」で申請する必要があります。

補助対象となる事業者は、中小企業、個人事業主を含む小規模事業者です。ただし、資本金や従業員数に基づく要件がありますので、IT導入補助金公式HPまたは公募要領をご確認ください。

IT導入補助金公式HP
デジタル化基盤導入枠 公募要領


その他の申請要件や手続きについては、過去のブログ記事をご覧ください。

2023年度のIT導入補助金の要綱・スケジュール発表! 中小企業のITツール導入をサポートいたします – いちからNews (ichikala.com)

デジタル化基盤導入枠の補助率と申請額

デジタル化基盤導入枠の補助率と補助額については以下の通りです。
ECサイトの場合、以下の表にあるように、「決済」「EC」の機能を満たしているため、最大350万円までの補助が受けられます。

補助率:3/450万円以下)2/350万円以上

補助額の上限:350万円

以下は、申請額と補助額、実質の自己負担額の例です。

例1)150万円で申請する場合:100万円の補助金が受けられ、自己負担額は65万円(税抜)になります。

例2)300万円で申請する場合:200万円の補助金が受けられ、自己負担額は130万円(税抜)になります。

例3)525万円で申請する場合:350万円の補助金が受けられ、自己負担額は227.5万円(税抜)になります。

※申請額の税抜額が補助金の対象です。消費税を加えた金額が自己負担額となります。
詳細の見積もりは、IT導入補助金公式HPの補助金シュミレーターを活用してください。
https://www.it-hojo.jp/first-one/digital-type.html#anchor02

IT導入補助金を使ったECサイト導入事例

PC

■業種:書籍販売店(古書店)
■導入前の課題:既にHPはお持ちでしたが、情報のみのサイトでした。教授や専門家、コレクターを中心としたリピート客で成立していましたが、コロナの影響で実店舗での売上が厳しくなっていました。
■導入後の状況:デザインも一新したEC機能を持ったサイトを新規で設けることにより、既存顧客のネット上での購入に加えて、自動翻訳機能の導入により海外からの新規購入者を獲得することができました。

IT導入補助金の申請から報告、交付までの流れ

ECサイト導入に活用できるデジタル化枠の申請締切は、下記の通りです。

1次締切:4月25日(火)
2次締切:5月16日(火)
3次締切:6月 2日(金)

4次締切:6月 20日(火)
5次締切:7月 10日(月)
6次締切:7月 31日(月)

以下は、IT導入補助金の見積もりから補助金交付までの手続きの流れです。

導入の見積もり➤申請➤審査➤採択➤ITツール導入➤支払い・精算➤実施報告➤審査➤補助金交付➤効果報告(交付から約1年後)

以前にも、IT導入補助金は事業者様の申請の負担が少ない助成金であると説明しましたが、必ず交付されるものではありません。事前準備と申請の手順を理解し、しっかりと準備して対応しましょう。

申請時に必要な準備と必要書類について下記にまとめました。詳細については以前のブログを参照してください。

IT導入補助金を活用する際の注意点

IT導入補助金を活用する際に留意すべき点をまとめました。以下の点に留意することが大切です。

  • 事業者様単独での申請はできません
    申請は必ずIT導入支援事業者と共に行う必要があります。
  • 決められたITツールのみで申請が可能
    IT導入支援事業者が登録したITツールでなければ申請できません。
  • 補助金は100%交付されるものではありません
    申請しただけで補助金が受給できるわけではありません。事務局による審査が行われ、採択の結果は約1ヶ月後に通知されます。(過去のIT導入補助金の採択数と採択率
  • 補助金交付までには時間がかかります
    先に導入費用全額を支払いの後に補助金が交付されます。そのため、資金計画を立てる必要があります。
  • 効果報告の義務を忘れないこと
    補助金交付後には、効果報告の提出が必須とされています。報告は補助金交付後の約1年後に行われ、場合によっては返還を求められることがあります。忘れずに行いましょう。

※事務手続きに慣れていない事業者様は多いかと思います。申請の際には、IT支援事業者の選定には十分留意しましょう。IT導入補助金の申請から報告までをサポートしてくれるIT導入支援事業者かどうかで判断することが大切です。

その他、補足情報

ECサイトを導入した後の販売促進費用についても、コスト削減をしたい事業者は多いのではないでしょうか。広告費はIT導入補助金では対象外ですが、LINE公式やLステップ、MAツールなどの販促ツールの導入は経費対象となります。

これらは、IT導入補助金では、「通常枠」での申請が可能ですので、同年度でも併せて利用することができます(ただし、同年度に申請した場合、審査時に減点対象となりますのでご注意ください)。

下記は、IT導入補助金で経費対象となるITツール(ソフト)の機能一覧です。事業の課題として、必要な機能を有するITツールがある場合は導入を検討してみてください。➤弊社登録のITツール例

ECサイト導入経費が補助される他の助成金

今回、ECサイト構築の際に事業者様の申請負担が比較的少ない補助金として、IT導入補助金をご紹介しました。
ECサイト構築に使える補助金は他にもありますので、他の助成金についても検討してみるとよいでしょう。

・事業再構築補助金
・ものづくり補助金
・小規模事業者持続化補助金
・販路開拓サポート助成事業(東京都)

これらの助成事業については、また別の記事でまとめさせていただきます。

まとめ

この記事では、ECサイト導入時にIT導入補助金を利用することで、費用削減が可能であることを紹介させていただきました。IT導入補助金は主に中小企業に対してITツールの導入費用が補助される制度であり、ECサイト構築に必要なソフトウェアや導入関連費用の多くが対象となる制度であるということを解説しました。

弊社では、IT導入補助金の申請から報告まではもちろん、IT支援事業者になって中小事業者を支援したい方の登録サポートもしております。
無料相談も承っていますので、気兼ねなくご相談ください。

IT導入補助金2023スケジュール
★IT補助金×ECサイトのお知らせ