こんにちは!

前回まで、主に借入の方法についてお話ししました。ここからは、借入を離れて、そもそも創業のための準備には何が必要かということについてお話したいと思います。

資金調達も創業(事業)を成功させるための手段の1つに過ぎません。日々創業のご相談を受ける中で良くご質問を受ける点を中心に、そのほかには、どのような準備が必要か考えていきたいと思います。

資金調達以外で準備段階で検討する主なことは、①初期対応:認可と設備、②体制整備:法人格・事務所・人員、③売上確保、の3つが上げられます。順番に上げていきます。

[①初期対応:認可と設備]

原則として事業開始の際には、税務署に「開業届」という書類を出せばいつからでもスタートできます。ただし、社会的な影響や品質担保等の観点から、一定の事業には「事業認可」が必要になります。相談が多い代表的なものは以下の通りです。

A)飲食店 B)美容室・まつげエステ C)古物商 D)建設・不動産業 F)福祉業

この際、気を付けたいの認可を取るまでの費用や難易度がどの程度必要なのかということです。

飲食店であれば、基本的な設備や物件の取得費用で500万円を下回ることは稀ですし、建設・不動産業や福祉業のように必要な経験を持った人材を雇用しなければならないものも多くあります。

さらに、認可を取るためには店舗契約や設備導入が必要なものもあり、それぞれ必要な手続きが決まっています。

結論としては、全て揃えるのにいくらかかるか、どのようにそろえるかを考えること。そしてそれを賄えるだけの資金が手元にあるのかが重要です。

[②体制整備:法人格・事務所・人員]

事業を開始しようとする際の代表的な質問に、「法人格をどうするのか」ということがあります。また、事務所の確保や人員採用はどうすべきかということも気にされる場合もあります。

結論としては、許認可や取引先の要請等で法人格が必要とされていないのであれば、法人格は不要とご説明しています。

もちろん、事業の信用性や想定する売上の規模から考えて法人格があった方が良い場合もあります。

法人にすべきか否かについての一番分かりやすい論点は「税金」です。これを考えるための指標が「どのくらいの売上・利益」の規模です。

目安としては、消費税の免税点である年商1000万円、5000万円をいつ超えそうかということであり、そこまでの売上が望めない場合は、「個人事業」として負担を小さくして始めることがお勧めです。

簡単に説明すると法人にする場合、初期費用が10~30万円。毎年の税負担が7万円あります。また、登記する住所を自宅にできない場合は事務所の賃貸費用も必要になります。

一方で個人事業の場合には、初期費用およびランニング費用として明確にかかるものはゼロとなります。

[③売上確保]

こちらは創業準備に入るのか、微妙な所はありますが、今までの論点の中で最も重要な点です。

これまでの会社勤めの場合とことなり、仕事は上司から依頼されませんし、結果として売上は急に増えません。

一方で、商談に行くための交通費、ZOOM面談するための契約料等、売上を確保するための費用はドンドン増えていきます。予定外の売上は無く、予定外の出費は嵩むということです。

特に、これまでのご相談の中で立ち上がりに時間がかかりそうな事業(商談開始から入金までの時間が長くかかるもの)については、この点についての対策を良く質問しています。

結論としては、事前の準備をしっかりとする、ということに尽きるのですが考えられる対策としては、a)労働対価性の高い業務、b)定期収入のある業務、c)商談期間の短い業務とやりたい業務とのバランスを図っていくことに尽きると考えています。

創業した際によくある勘違いとしては、「やりたいことをやる」ために創業したのだから、やりたいことが100%できるような計画を立てていくことです。

「やりたいこと」ができるのは、自営となる大きなメリットである一方で、創業したての頃は少なくとも多くの事業者が「やりたいこと100%」でできていることは、ほぼ無いと言えます。

また、上記にあげられるいわゆる会社員のような仕事を一定程度混ぜていくことは、顧客ニーズが学べたりスキルが上がっていくことにつながり、本業の向上にもつながる点が強いと考えられます。

前職から週1-2日、継続して業務を受けることができれば精神的にも収入的にも非常に安定感は増しますし、前職での勤務状況が良かったということの評価の点で、借入を希望する金融機関からも一定の評価が受けやすいという側面もあります。

いかがだったでしょうか。

資金の確保は事業準備の重要な部分である一方で、それだけがすべてでは無く、「認可・体制・売上確保」等の部分での準備を進めていく必要性があります。

 

こういった部分をしっかりと準備されているかどうかは、事業計画書の内容にも大きく反映しますし、それにより評価も変わってきます。何より、事前に入念に考えたことは必ず事業の成功の可能性を上げていくことにつながります。